翻訳者とエディター

翻訳者よりもエディターの方が楽だと言われることがある。翻訳者は、調査→翻訳→推敲のプロセスを1人でこなさなければならない。重大な誤訳があればクレームになり、最悪の場合、二度と声がかからなくなる。

個人で契約できるようなレベルの優秀な翻訳者が多ければ、エディットという作業自体不要である。だが、案件を受けたエージェント(翻訳会社)がフリーの翻訳者に安値で外注し、それをフリーまたは社内のエディターがチェックするという図式が崩れない限り(おそらく崩れないが)、エディターの仕事が楽になることはない。

標準的な作業量が1日2000w(原文)だとした場合、エディターはその3〜4倍の訳文をチェックしなければならない。だが、高品質を保ちながらその時間を1/3〜1/4に短縮することは不可能に近い。

エディター(校正を兼ねる場合もある)は一切の主観を排して第三者的に訳文を見るのが仕事である。翻訳者から上がってくる訳文の中には、そのままでは外に出せないものがあまりにも多すぎる。そのような訳文が付加価値の高い翻訳と呼べるのかについては、ここでは触れないが、興味がある人は辻谷真一郎氏の「翻訳の原点」を読まれるとよい。

誤訳も多い。その大半はケアレスミスによるものだ。三単元のsが抜けている、文法的に誤りがあるなどは茶飯事であり、数字を間違える、売上高の金額がひと桁違う、ひどいときには通貨単位さえ間違える。どれも単純なものだが、信用問題に関わるものだ。フリーの翻訳者を目指すのであれば、三行半を突きつけられないよう、細心の注意を払うべきである。翻訳料だけで贅沢な生活ができるような時代ではないのだから。