〜金融・経済翻訳 (1) 〜

フリーランス翻訳時代を経て、講師・チェッカーを兼任するに至るまで、私自身さまざまな方法や経路で金融・経済翻訳に触れてきましたが、翻訳需要に沿った学習を常に追求しない限り、安定的な収入を確保することはできません。特に、現場サイドと翻訳(学習)者の間には情報の非対称性が大きいと感じています。そこでこの記事では、金融・経済翻訳の需要動向と、現場で求められる翻訳者像を考えてみたいと思います。

★金融翻訳の二本の柱
金融系の翻訳は、主に「金融・証券」と「財務・会計」に大別されます。需要・ボリュームの大きいドキュメントとしては、アニュアルレポートの翻訳(財務・会計)、目論見書・運用報告書や市場レポート(金融・証券)が挙げられます。実務翻訳者の主戦場となる分野と言ってもよいでしょう。
もちろん法務寄りの金融翻訳や一般的なビジネス翻訳も存在しますが、財務・会計、金融・証券の二本柱に対応できる翻訳者は不足しています。

★経験と知識がモノを言う
銀行、証券会社、投資ファンドなどで勤務経験のある人、特に現場で投資・財務関連の英文を分析したり、MBA証券アナリスト公認会計士などの資格を取得(あるいは勉強)したことがある人にとっては、当然ながら有利な分野となります(派遣会社や翻訳会社といったエージェントが募集する場合、翻訳の実務経験に加え、業界での実務経験を必須とする案件もあります)。

★実務未経験者は翻訳者になれないのか
実際に活躍している翻訳者を見てみると、US CPAを取得→監査法人などで勤務経験がある人、銀行の資金運用部で勤務経験がある人などが多いのは事実です。
しかし、英文解釈や表現力に問題のある翻訳者も多く、現場で合格ラインに達する(Bランクの)翻訳者が少ないのが実情です。また、実務経験の有無にかかわらず、翻訳は「ものづくり」と同じであり、「成果物」のみで判断されます。実務経験ゼロでも案件を継続的に受注したり、チェック業務に携わっている翻訳者も少なからず存在します。

次回は、どのような学習方法が効果的なのかについて、自分自身の経験と共にお話したいと思います。

(続く)