翻訳学校批判に向き合う

翻訳学校出身の翻訳者は使えない、という話は以前からよく聞く話だが、そう発言している張本人が翻訳学校で教えていたり、人の褌で相撲を取っていたりするから、笑いを禁じ得ない。

翻訳学校が優秀な翻訳者を輩出しているとは思わないが、「この人なら通用するだろう」と感じる人が受講することはある。ポテンシャルのある人が多く受講するほど、優秀な翻訳者は育ちやすい。十分な実力がある人には、早い段階でトライアルや実案件を回すこともあるが、金銭的な理由などにより、翻訳者を目指す人が少なくなっているのも事実である。問題は、翻訳者市場全体が地盤沈下を起こしていることであって、「上手に教えられる」翻訳者が不足していることではないと思う。

あくまで、「翻訳学校を出ていない翻訳者が翻訳者全体に占める比率が高い」「最近、翻訳者の質が落ちている」という話にすぎず、翻訳学校出身の翻訳者は使えない、というのは(価値判断や統計手法の問題も含めて)誤解を招く議論である。実際、私や仲間の講師が教えていた受講生の中には、今も現場のトップクラスで活躍している翻訳者が少なからずいる(比較的年齢の高い人が多い印象だが)。