翻訳審査所感
翻訳の審査を始めてから随分経つが、トライアルであれ、検定試験であれ、訳注の書き方一つも知らない受験者が多すぎる。訳注を平気で「である」調で書いてくる、解釈に影響を与えない原文の誤植ばかりを取り上げる割に、好き勝手に訳した箇所を指摘してこない等、そもそも訳注の意義を分かっていない人が多い。誰がその訳注を読むことになるのかを想像することは、誰がその翻訳を読むのかを考えることであり、翻訳の商品性をどう捉えているのかという意識を表しているのだと思う。
なんやかんや、ありまして・・
現在は、在宅勤務が週4~5日程度、翻訳の講義に週1日程度は出向いています。企業向け研修のチェック、教材作成、検定試験の審査などの業務を請け負いながら、最近では金融案件の翻訳チェック・品質管理関連の仕事もなるべく引き受けるようにしています。
翻訳教育に携わる一方で、実際の翻訳案件では最後の砦としての大役を引き受けているわけですが、ハードルは年々上がっています。精神衛生上、チェック・品質管理関係の仕事はあまり宜しくありませんが、仕事柄、いろいろな人の訳文を見る機会があるのは、間違いなく自分の成長につながっていると思います。特に、クライアントからのフィードバックやネイティブ・スピーカーのチェック済訳文などを見ていると、最終形を意識して訳すことの重要性に気づかされます。
自ら初心に帰るつもりで、少しずつ情報を発信していければと考えています。
参考サイト 備忘録 (update: 2019/12)
1. 国際政治・金融・経済全般
2. アセットクラス、マーケット情報
[全般]
https://www.smbctb.co.jp/rates/
[株式]
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/opinion/stock/horiko/ (米国株)
[債券・金利]
http://www.westernasset.com/us/en/
[コモディティ]
[投信・ETF]
ETF投資のリスク | 日本取引所グループ (ETFの類型)
[先物・オプション]
http://jp.wsj.com/articles/SB10734999991334983926204582608602217637494
3. 各国の政治・経済制度、地政学的リスク
[グローバル]
海外建設・不動産市場データベース(法人・税制等)
[米国]
About the USA (法律と条約ー立法過程)
https://americancenterjapan.com/aboutusa/laws/1306/
輸出規制、再輸出規制(域外適用)
http://www.cistec.or.jp/service/beikoku_saiyusyutukisei/ear_nyumon.pdf
c.f. 外為法(http://www.kanazawa-med.ac.jp/kenkyu/anzenhosyo/page2.html)
[EU・英国]
英国のEU離脱「移行措置」のイメージ(2016年12月):時事ドットコム
http://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh16-01/s1_16_2_3.html (経産省、英国のEU離脱に伴う長期的影響)
[中国]
[インド]
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2016/nishi160621india.pdf
4. IoT、フィンテック、
https://www.icr.co.jp/newsletter/category/law (IT法制度)
5. コネクテッド、電動化、シェアリング、
6. 産業翻訳 / English
http://bridge-english.blogspot.jp/ (オンライン英会話辞典Bridge)
よくある質問 ~翻訳学習編~
Q. 金融分野の英日翻訳者を目指しているが、何が必要か?
・どのような英文であれ、文法・構文を正確に解釈し、訳出できるだけの英語力は必須。苦手な人は、大学受験生向けの英文解釈テキスト、文法書を活用し、英文構造を正確に掴む訓練を積むこと。
・実務翻訳全般のルール、最低限の翻訳テクニックは学んでおきたい。関連書籍は幾つか出版されている。やれることをやってみた後で、翻訳学校の講座を活用するのはそれなりに有効。
・金融を専門にするのであれば、日経新聞だけでなく、ロイター、英文経済誌などで最新の情報、表現、スタイルを取り入れる必要がある。内容としては、マクロ経済、財政・金融政策、財務・会計、各種金融商品(株式、債券、ローン、デリバティブ)、投資銀行業務(M&A、シンジケートローン)、各種ファンド(投資信託、プライベート・エクイティ、ヘッジファンド)など。弱点をなくすための学習が必須。証券外務員、証券アナリスト(1次レベル)の知識はどうしても必要になる。英文契約書は一通り勉強しておくべき。
・それでもわからない(訳せない)ことは多々ある。ウェブのリサーチ、各種辞書をうまく活用する。英英辞典、googleの英文・和文検索、関連内容の調査(と吸収)。
Q. どれくらい勉強すれば翻訳者になれるのか?
トライアルに合格するまでの期間は、個人差があるので一概には言えないが、概ね1~2年。3年やってダメなら、やり方が間違っている可能性大。
担当者はどこを見ているのか。
・英文解釈が正確であること
・訳文の筋が通っていること
・解釈・表現に「常識」が備わっていること
・リサーチの精度
Q. 翻訳会社に登録したが、(金融分野の)仕事が来ない。
・経歴や得意分野を見て発注していることを念頭に置いておく。
・供給過剰で単価が下がっているのは周知のとおり。トライアルに合格しても、仕事を継続的に受注できるだけの訓練、アピールは当然必要。
・案件は一部の優秀な(既存の)翻訳者に発注される傾向がある。翻訳会社もリスクを取れないので、(よほど優秀でない限り)新人翻訳者には、一般的なビジネス案件や、分量の少ない案件からの発注が一般的。履歴書の段階で得意な分野、翻訳実績をアピールできていなければ、発注者から声がかかりにくいのは当然と考えるべき。
・発注されやすい案件の特徴をつかみ、「どのようなドキュメントが得意か」をアピールできるようにしておく。専門性で勝負できなくても、ある程度の翻訳実績を作っておけば、類似案件が発注される可能性は高まる。
・忘れられていると思ったら、自分から担当者に連絡すること。覚悟さえあれば、失うものは何もないはず。
2013年
完全に放置状態のブログでしたが、ここ1年で考えたことなど、少しずつ書いてみたいと思います。
色々なポストを兼任しているので、必然的に利益相反が生じるのですが、インサイダー情報は封印しておきます。
[翻訳者・チェッカー]
金融分野では、主にチェッカーとして、実案件の訳文に触れる機会が増えました。
マーケットレポートについては、一部クライアントの要求が厳しく、従来以上に訳文の完成度が求められていると感じます。訳文のリライトに対する需要も高まっていくことでしょう。表現力について言えば、1つは訳文の組み立て方、もう1つはターゲット原語の専門的な言い回しを習得することがポイントになると思います。あともう1つ、「思い切りの良さ」も重要。実案件の最終審査を下すのはクライアントですから、クライアントのニーズに合う訳文を納品できないと、継続受注は難しい。
ファンドの目論見書、運用報告書等もよく目にします。スキーム全般の知識、海外法制・税制の知識、金融商品の知識など、さまざまな知識が要求されますが、ボリュームゾーンです。これに関連して、新興国の法務リスク調査等、公開情報が少ない報告書の発注も少しずつ増えているようです。
(続)
after all, in the long run, finally, at last, in the end, eventually - 3
(5) at (long) last:「やっと」「ついに」の意味で、ある事態が長い時間の後、やっと実現したことを示唆する。「いらだち」が強く表れることが多い。
期待していた事態のほか、期待していなかった事態が実現する場合もある。
- At long last the guests departed.(ようやく客が帰った)
- The day I have long dreaded has at last arrived.(恐れてきた日がついにやってきた)
「安堵の気持ち」が強く表れる場合もある。
- To tell the truth, it's a relief to be rid of them at last.(実は、あいつらがいなくなってせいせいしたよ)
いずれにしても、at lastは強い感情が込められた語句であり、非感情的なfinallyでは置きかえられない場合もある。
(6) eventually:一連の出来事の結末に言及する
- Pneumonia eventually led to his death.(彼は肺炎をこじらせて死んだ)
eventuallyは、finallyよりもin the endと意味・用法が重なる部分が多い。finallyと異なり、将来の状況に言及して「いつか〜する」の意味になり、その過程での努力が暗示されることもある。
after all, in the long run, finally, at last, in the end, eventually - 2
(3)finally
(a) 「最終的に」の意味で、一連の事態の推移の中で、最終段階がどうなったかを言及している。この点でin the long runとは異なる。
- Finally, the report mentions a decline in profits. (その報告書の最後には、収益の減少について書かれている)
- “And with each rain it gets colder until finally it snows.” (雨が降るたびに寒くなり、いつしか雪に変わる)
★after allとの比較
- We’ve finally (×after all) decided to go away for the New Year (いろいろあったけど、結局は正月休暇に出かけることに決めた)
- So you didn’t have to pay a parking fine after all (×finally) ! (結局、君は駐車違反の罰金を払わずに済んだんだ)
(b)「ようやく」「やっと」。この意味では、中位(mid-position)に置かれることが多い。
- I had the safe made specially, and it’s finally stood me in good stead. (特別に作らせた金庫がようやく役に立った)
達成や決断に言及する動詞(たとえば、succeed, decide)と用いられて、そこに至るまでに困難や迷いがあったことを含意する。
- “after a long time and especially after much doubt or difficulty” ―Activator
- Jim finally decided, after much thought, to leave his job. ―Activator
- Noriko was finally able to work up enough courage to approach the students at the recruiting desk. ―Johnson, Green Grapes
(4) in the end:finallyと同様、一連の出来事の結末や、思案の末の結論について述べるのに用いられ、最終的にどうなったのか、どうなるのかについて言う。
- I left in the middle of the film. Did they get married in the end? ―Swan
- Friends are friends, but in the end the most important thing is yourself. ―Mathy, Wonderful Fool
- You can’t escape―wherever you go the police will find you in the end. ―Activator