翻訳の使われ方

ある著名な脚本家が、映画業界とテレビ業界では「本」の扱い方に雲泥の差があると語っていた。脚本に対する修正が当たり前の映画業界に対し、テレビ業界ではそのまま採用されるのだという。

翻訳業界はどうだろう。翻訳が原文に忠実に行われているとすれば、クライアントは訳文を大切にしてくれるのだろうか。そもそも、クライアントによって翻訳を利用する目的は異なる。大雑把な内容把握のために使う企業もあれば、社内の専門家による校閲・修正を前提として発注する企業もある。業界特有の言い回しや慣行に相応しくない(メッセージが伝わらない)という理由だけで、客先から厳しい評価を下されることも珍しくない。客先の目線に立った翻訳でなければ、訳文を大切にしてもらうことなど、夢のまた夢である。