ESG関連

コンセプトが要約されているサイト、有用と思われる記述等を、翻訳者の観点から備忘録的に整理・追加。

 

[Blackrock]

http://www.morningstar.co.jp/event/1509/blackrock/index.html

[インパクト投資の特徴]

インパクト投資」がSRIやESGと異なる点として、

・社会的貢献や環境などに関して明確な判断基準を持っている

・企業が及ぼす社会への好影響や効果を測定し、投資する企業を選別する

・同時に投資リターンを追求する

 →投資収益+社会的インパクト=インパクト投資

[ファンドの特徴]

・各企業の社会的インパクトに着目しながら、先進国の企業または先進国に主要な業務基盤がある株式等に投資(健康(医療、感染症対策、健康管理)、環境(テクノロジーと特許、環境政策)、経営姿勢(従業員満足度、ジェンダー政策)など)

・低コストのアクティブファンド

ビッグデータの分析など最新のテクノロジーを駆使したブラックロック独自の計量モデルを活用し、社会的インパクトと投資収益の両方に着目したポートフォリオを構築

 

[Reuters]

https://jp.reuters.com/article/global-hedgefunds-sustainable-idJPKBN1YK0VC

・環境や社会問題、企業統治への取り組みの積極性をうたい、世界の投資資金を取り込んでいる「ESG企業」に対し、ヘッジファンド空売りを仕掛ける機会をうかがっている。

・「持続可能」と定義される投資は世界の全運用資産の4分の1余り。ESGを喧伝する企業は同業他社よりアウトパフォームしているとするアナリストリポートを追い風に、この分野への投資額は約31兆ドルに達している。

空売り筋の関心を引くのは、ESGのレーティングが高い企業。ESG評価が最も高い企業に対する売り持ちの規模は、評価が最も低い企業を50%上回った。

・持続可能性に関する企業の不実表示、いわゆるグリーンウォッシュ(うわべだけの環境配慮)が株価を押し上げている可能性。

 

 

[FP Journal] 

GreenwashingはFP向けの記事でも登場している。

https://www.onefpa.org/journal/Pages/DEC19-Future-Firm-Future-Planner.aspx

記事の中ではB CorporationやB Labについても取り上げられていた。Sustainable Japanによる「Bコーポレーション」の説明がよくまとまっている。B Labの動画もいい感じ。Compete in the worldからCompete for the worldの時代へ。

https://sustainablejapan.jp/2015/02/09/b-corporation/13882

 

チェッカーと校正者

チェックの日程が来週後半に集中しており、どうやら来週以降、まとまった休みを取れそうにない。これ、毎四半期繰り返される現象。中途半端な講義をやるのも嫌だし、中途半端な訳文を納品するのも嫌だし。

納期延長を依頼したら、客先納期が云々と難色を示された。翻訳者よりもチェッカーの予定を先に確保すべきだろ、と思いつつも、「校正入れなくていいから」「校正が必要になるような訳文、納品してないので」と説得し、分納で対応することに。読み手目線のリライトが必要な案件なので、半分以上は訳文を書き換える必要がある(別に翻訳が粗悪だと言いたいわけではない)。それに、更新されていない用語集に基づいて校正されるのは、なんというか、洒落にならないわけで…。

ちなみに、翻訳者からエディターに転向した人の中には、大きなストレスを抱えながら仕事をしている人もいるようだ。粗悪な訳文を嘆く前に、何をどれだけチェックするのか、エージェント側としっかり詰めておいたほうが良い(支払方法も含めて)。

AI翻訳が日進月歩で進化する中で(最近では読むに堪えない日本語も少しずつ減ってきた)、翻訳チェックや品質管理の仕事がなくなることはないだろう。肝心なのは割り切りである。No Check, So Happy。

 

翻訳指導上の注意点

師走到来。今年もあっという間だったなあ。にわかに忙しくなってきたので、備忘録的に整理しておこうと思う。

 

1.翻訳者としての責任

自分ならその訳文に金を払うだろうか。論理が不明瞭な訳文、読むに堪えない訳文に付加価値はない。特に金融翻訳の場合、事実関係の確認、(投資家目線の)具体化・補足・意訳は当然必要になる。「所詮は好みの問題」と切り捨てるのは簡単だが、クライアントの満足を得られなければ、真のプロ翻訳者にはなれない。翻訳が上手とか下手とかいう問題よりも、読み手の視点を持っているかどうかが重要になる。ただ漫然と(教科書通りに)翻訳しているだけでは、翻訳会社が求める「売れる」翻訳者にはなれない。金融分野でも、助手としては新人翻訳者よりもMTの方がまし、という時代が来るかもしれない。

 

2.無知の知

「気づいていないこと」に気づいてもらう。論理解釈や英文解釈は的確か、日本語の歪みはないか、ドキュメントとの整合性や原文との距離感の取り方に問題がないかなど、受講生の癖を見抜いてコメントする。

もう一つ、「知らないこと」を知ってもらうことも重要である。課題や実案件の例題を通じて、どのような分野(知識)を強化していく必要があるのか、認識してもらうことが成長の第一歩。

 

3.個性と伸びしろの見極め

翻訳に関して言えば、個性や癖はそう簡単に消えるものではないが、同じ内容の訳文なら、読みやすい・直しやすいほうが良いに決まっている。翻訳は、どちらかと言えば「消去法」の作業である。「原文=正解」と考えて延々と自己流の翻訳を続ける学習者よりも、クライアントのニーズに合わせようと日々訳文を見直している学習者の方が伸びる。

伸び代やポテンシャルが感じられる(そして、素直な)学習者は、現場に推薦することにしている。逆に、柔軟性のない人やすぐにポシャりそうな人は、いくら優秀であっても、取ろうとは思わない。あと、言語感覚が悪い人とかね。 

翻訳学校批判に向き合う

翻訳学校出身の翻訳者は使えない、という話は以前からよく聞く話だが、そう発言している張本人が翻訳学校で教えていたり、人の褌で相撲を取っていたりするから、笑いを禁じ得ない。

翻訳学校が優秀な翻訳者を輩出しているとは思わないが、「この人なら通用するだろう」と感じる人が受講することはある。ポテンシャルのある人が多く受講するほど、優秀な翻訳者は育ちやすい。十分な実力がある人には、早い段階でトライアルや実案件を回すこともあるが、金銭的な理由などにより、翻訳者を目指す人が少なくなっているのも事実である。問題は、翻訳者市場全体が地盤沈下を起こしていることであって、「上手に教えられる」翻訳者が不足していることではないと思う。

あくまで、「翻訳学校を出ていない翻訳者が翻訳者全体に占める比率が高い」「最近、翻訳者の質が落ちている」という話にすぎず、翻訳学校出身の翻訳者は使えない、というのは(価値判断や統計手法の問題も含めて)誤解を招く議論である。実際、私や仲間の講師が教えていた受講生の中には、今も現場のトップクラスで活躍している翻訳者が少なからずいる(比較的年齢の高い人が多い印象だが)。

 

 

 

「取引される」の英語表現

(例文)The Nikkei average is expected to trade in a narrow range on Tuesday amid concerns about the global economy,

 

自動詞のtrade(at...) は「(...で) 取引される」という意味であり、商品、市場、セクター、指数など、様々な名詞が主語になる。自動詞のtradeに「~を取引する」という意味合いはないため、「「日経平均」という商品が取引されているわけではないから、tradeは使えない」という説明はナンセンスである。

(例)The S&P 500 trades at nearly 18 times projected earnings for the current financial year.

日経平均も指数としての扱いであり、the Nikkei Stock Average is expected to  move in a range of... = the Nikkei Stock Average is expected to trade in a range of...としても、何ら問題はない。

「割安」にcheapは使えないのか

 

(例文)The Fund's approach is to buy out of favour companies at what they consider very cheap.

ファンドは、バリュエーションが極めて割安と考えられる不人気銘柄に投資するアプローチをとっている。

 

「割安」はundervalued, inexpensiveのほか、価格の比較であればcheapも問題なく使える。cheapは物に関する記述では低品質を示唆するが、例えば Running costs are coming down because of cheaper fuel. (Collins) のような英文では、否定的な意味合いはない。

以前、某試験の審査をしている際に「株が「割安である」という場合にcheapは通常用いない」という内容のコメントを見て驚いた記憶がある。おそらく、この採点者は実際の英文運用報告書や市場レポートをあまり読んだことがないのだろう。普通に登場する表現なので、安心して使ってほしい。

(例1)Sterling may look cheap versus the US dollar, but we don’t think it’s reached a bottom yet.

(例2)By most measures though, Japanese equities are cheap versus history.

 

翻訳の使われ方

ある著名な脚本家が、映画業界とテレビ業界では「本」の扱い方に雲泥の差があると語っていた。脚本に対する修正が当たり前の映画業界に対し、テレビ業界ではそのまま採用されるのだという。

翻訳業界はどうだろう。翻訳が原文に忠実に行われているとすれば、クライアントは訳文を大切にしてくれるのだろうか。そもそも、クライアントによって翻訳を利用する目的は異なる。大雑把な内容把握のために使う企業もあれば、社内の専門家による校閲・修正を前提として発注する企業もある。業界特有の言い回しや慣行に相応しくない(メッセージが伝わらない)という理由だけで、客先から厳しい評価を下されることも珍しくない。客先の目線に立った翻訳でなければ、訳文を大切にしてもらうことなど、夢のまた夢である。